こんにちは。どんきー先生です
今回は復学支援の事例についてご紹介したいと思います。
春休み明けに復学を果たした中学生の事例です。
新学年が始まるこの時期は不登校から再び学校に行き始める時期としては比較的復帰しやすい時期と言えるかもしれません。
ただ、新学年明けすぐは登校できても1週2週と過ごすうちに疲れが出始め、お休みすることがあります。そして、そのままお休みが続いてしまうというケースも多い時期です。そうならないよう持続して支援を行うことが大切です。
では、事例をご紹介していきます。



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不登校になったきっかけと原因

2年生の2学期の中頃ぐらいに、体調不良をきっかけに数日欠席するようになりました。
その後、週に1日ぐらい欠席しはじめ、それが週に2日、3日と欠席が増えていきつつ、なんとか登校を続けていたが、不登校状態になっていってしまいました。
欠席する日が増えてくると「本当は学校に行きたくない。つらい」と言い始めたようです。

その理由として
  • 「クラスのザワザワが落ち着かない」
  • 「人前で発表するのがとても緊張する」
  • 「目上の人と話すとき泣きそうになる」
  • 「目を見て人と話せない」
ということを訴えていたようです。

塾や習い事に通っていたが、塾には行けなくなってしまったようです。
欠席が続いたことで勉強もわからなくなってしまっていきました。
心療内科にかかり薬も処方されたようです。
少し気分が良くなるが社会生活に復帰できるほどの効果はなかったということでした。
学校を休みだしてからは塞ぎこむようになっていったようです。

きっかけ自体は「これ」と言った具体的なものではなく、中学生活の間の積み重ねの部分が大きいように見えました。また、おそらく登校できている間は気にならないことが、体調不良でお休みしたことがきっかけとなり、自分が苦手と感じていた部分を強く意識してしまい、学校に行きにくい理由となってしまったように思います。
きっかけはどの子にも起こりうることであることから、原因を分析していくと子ども自身の性格傾向に起因する課題があることが見えてきました。


子どもの課題

親御さんから聞き取った子どもの課題としては以下のようなものが見られました。

  • 神経質傾向(周りの目が気になる)
  • 緊張に弱い(恥ずかしい思いをしたことから人前で発表することが苦手)
  • 頑固(屁理屈をこねて人の意見を聞こうとしない)
  • 内向的(自分からは話しかけたりできない。学校外でも店員に話しかけたりできない)
  • 我慢力が低い(物欲が強く断っても聞き入れるまで言い続ける)

一つ一つどうしてそのように思われるかも親御さんから聞き取り、主に以上のような課題が見えてきました。
彼女の課題と思える部分は彼女の長所ともいえる部分です。
ですので、課題を解決するということよりも
彼女が彼女自身のまま自信を持って社会生活を送っていけるような対応が求められるのだろうという分析ができました。

そして、見えてきた彼女の課題は彼女がもともと持っている特性だけではなく、彼女が育ってきた環境の影響によるものもあることが見えてきました。

家庭の対応傾向

子どもが育ってきた環境はもちろん家庭だけではなく、学校や幼稚園なども含まれます。
しかし、学校の環境や幼稚園の環境は家庭が手を出せるところではありません。
ですので、私たちの支援ではまず手を出しやすい家庭の対応をアセスメント(分析)するところから始めます。
そのアセスメント結果、以下のような傾向が見受けられました。

  • 過干渉傾向(宿題や勉強してるかなどほぼ毎日確認していた)
  • 先回り傾向(親が心配症であり、子どもが失敗する前に助けていた)
  • 共感が少ない(子どもの気持ちを汲まず、親の意見を常に言い続けていた)
  • 叱ってきていない(子どもがわがままを通しても叱らず、最終的には折れていた)
  • 子ども上位の傾向(意見を言っても聞かないので最終的には折れてきていた)

というような傾向が家庭の対応には見受けられました。
この家庭の対応が子どもが抱えている課題に影響していることが考えられました。
もちろん家庭の対応のすべてが子どもの課題すべてに影響しているということではありません。
あくまで一因になっていると考えられたということです。

しかし、この一因になっているだろう対応は子どものソーシャルスキル(社会に適応するための能力)を伸ばすことより、子どもが失敗しないように助けようと助けようとし過ぎてしまった対応になっていたと考えられます。もちろん、それは子を心配する親心からの対応だったと思います。
愛情深い親御さんだからこそされてきた対応によって子どもは社会で生きる上で必要なスキルをを身につけられず、社会に出ること自体に影響を及ぼしてしまったと残念ながら言わざるを得ないという分析となりました。

とはいえ、これまでの家庭の対応が影響したのであれば、影響しているだろう対応を変えていけば、子どもはその影響を受けてソーシャルスキルが伸びていくと考えられました。

不登校になってからの子どもの様子

家庭の対応を変えるにしても、子どもの状態は鑑みて対応していかないといけません。
何もかも変えればいいというわけではなく、子どもの状態を見ながら、徐々に対応していきました。
子どもの様子は以下のような状態でした。

  • ふさぎこんだような生活が続く。
  • 親と顔を合わせる時には会話はある。
  • そのほかはリビングでスマホやテレビを観て過ごす。
  • 特に荒れたり暴れたりするようなことはない。
  • 1人で泣いているようなときもある。
  • 物欲が強くなり、買ってもらえないとなったときだけ部屋から出てこなくなる。

このような様子でした。
この状態を考慮しながら家庭の対応を変えていけるところは変えていきました。

家庭内の対応を変える(システムズアプローチ)

親御さんご自身が心配性の傾向が強く、心配しすぎるあまり、子どもに対し過干渉になったり、先回りして子どもの失敗する経験を奪ってしまう、また共感できずに先に心配事を口にしてしまう傾向が強かったと見受けられました。また、子どもに嫌われないようにという気持ちも強く言いなりになってしまいやすい傾向にありました。
ですので、その対応をまずは家庭内で見直していきました。

子どもとの会話で聴く意識を持っていただく。つまり、傾聴の姿勢を持って子との会話を意識する。
そして、子どもが自ら話をしてくるまで待つ姿勢を持つ。
子どもからの要求についてはできるできないを明確にし、断るものは断る勇気を持っていただく

というような対応を支援を始めてからは意識して子と接していただきました。
そうすることで子どもと親御さんとの関係性を見直し、今まで密着し過ぎてしまっていた距離感を適度な距離を保って接することにつながり、家庭内での子どもの行動に変化が見られ始めました。

子どもからの要求は減ったが、会話自体は増える。
要求が減ったことで子どもが部屋にこもることはなくなる。


という変化が見られました。

ダイレクトアプローチ

子どもの変化は見られましたが登校するというところまでは変化が見られませんでした。
ただ、子どもから「学校行かないとな」という発言は見られ始めました。

いくら家庭内でソーシャルスキルを伸ばす意識を持っていただいて対応しても実際は社会に出ていない状態が続いているので、成長にも限界があります。
子どものソーシャルスキルを伸ばすためには実際に学校社会に戻り、社会生活を営みながら、社会でしかできない経験をすることが必要となってきます。
社会でしかできない経験が家庭で伸ばしたソーシャルスキルをさらに伸ばすことになり、子どもも学校で生活できる自信を持つことができるようになってきます。
そのためにはまずは復学を目指すということが必要となってきます。

子どもの口から「学校行かないとな」という発言が出たこの時点で親御さんとも相談し、ダイレクトアプローチ支援による復学に向けたサポートを始めることに決めました。


初めて私がお家に伺い、子どもと話したときには、子どもからは
「学年変わったら学校に行くつもりです。でも、、、」
とその先はなかなか言葉が出てこず、泣いているという状態でした。

学校に行っていない間に不安は強くなっているような状態だったのでしょう。

学校に行くつもりではいるけど、何が不安でどうしたらいいかわからなかったのだろうと思います。

私からはその気持ちを汲みつつ、
「わからないことだらけの状態で学校に復帰するというのは怖いだろうと思う。ただ、学年変わるタイミングに復帰するつもりというのは良い考えと思うよ。一人でがんばれというわけではないから、人の力も借りて頑張ってみよう」
という内容を話ました。


それでも「でも、、」「やっぱり、、」となかなか踏み切ることができずにいましたが、時間をかけて話し合ったことで彼女の口から「頑張ってみる」と話してくれました。


そこからは訪問カウンセラーと復学に向けて春休み中にできる準備を確認し、復学に向けて準備を始めました。
また、学校とも連携し、学校の先生の方でもサポートしていただくよう、具体的なお願いをお伝えし了承いただきました。


復学準備

私たちの復学に向けて行う準備は「学校に行ってない間にわからなくなってしまったこと」を補うようなサポートをしていきます。

今回は春休みの短い期間での準備となりました。
できる準備としては登校時間に合わせて起床することや、授業を受ける練習、人とのコミュニケーションをとること、学校に必要な物の準備を行いました。
起床についてはそこまで生活習慣を乱してなかったこともあり、ここは問題ありませんでした。
授業を受ける練習については、不登校中勉強をしていなかったこともあり、ペンを握って文字を書く練習をすることから始め、1限分ぐらいの時間を集中して勉強するというぐらいまで準備はできました。なかなか休んでいた間の勉強をすべて取り戻すというのは物理的に難しいところになるので、ここは子どもにも焦らずにできることからコツコツやっていこうという話をして準備を進めました。
勉強への不安はどうしてもなくならないところではあり、なくすために学校に行くという考え方を持って頑張っていこうと本人と確認しました。
人とのコミュニケーションについては本人が苦手意識を持っていたこともあったので、動画を観たりしながら訪問カウンセラーと一緒にトークすることで練習しました。彼女のコミュニケーション能力は問題はなく、人と話す機会を失っていたことにより自信を失くしていたという状況にあったように思います。自信を取り戻すまでは訪問カウンセラーとの練習のもたどたどしいコミュニケーションでしたが、学校に戻り自信を取り戻してからは問題ありませんでした。
学校に必要な準備物については、制服のサイズなど細かいところも確認しました。

以上のような準備を経て、復学日を迎えます。


そして、復学日

復学日は前日から訪問カウンセラーも私も伺い、翌日の復学日に向けた準備を行いました。
物理的な持ち物の準備はもちろんのこと、前日だからこそ抱える精神的な不安のケアのために私たちはサポートしていきます。
私からは「不安はあって当然」ということ。「その不安を乗り越え登校できれば見える景色が変わってくるだろう」ということを伝えました。
この対応は賛否がある対応だと思います。
しかし、前日だからこそ起こる不安から目を逸らさず立ち向かい乗り越えられたときこそ不登校を乗り越えられる。
そして、不登校を乗り越えられたからこそ自信を持つことができた子どもたちを私はたくさん見てきました。
また、私は家庭と子どものアセスメントをしっかり行ったうえで子どもに対応しています。
だからこそ、ここまでのことが言えるのです。
アセスメントやサポートがないのにこんなことは言えません。
とはいえ、それでも子どもの不安はなくならないものです。
ですので、訪問カウンセラーは子どもが寝る時間ぐらいまで、一緒に動画などを観て過ごし、少しでも緊張や不安を取り除いていきます。
それでも、不安が全部なくなることはないので、家庭でのサポートについても親御さんにアドバイスをし、万全の体制を組んで復学日を迎えました。

復学日当日は子どもも覚悟を決めていたのか、起きてから制服に着替え、身だしなみを整え、朝食も食べ、訪問カウンセラーと少し会話を交わし、「いってきます」と言って、今まで休んでいたことが嘘のようにスムーズに登校していきました。
とはいえ、さすがに表情は緊張しているようにも見えました。
訪問カウンセラーは校門まで一緒に行きましたがその間も立ち止まることなく登校したとのことでした。


継続登校

復学後は継続登校のステージに入ります。
とはいえ、いきなり毎日すべて登校するというわけにはいきません。
時々、お休みする日もありました。
お休みしながらも今度は長く休み続けることはなく、なんとか立て直して登校し、最終的には体調不良でどうしても行けない日以外は休まなくなっていきました。
家庭は復学準備を始めてからも復学後もソーシャルスキルを伸ばすという意識を持って対応を続けていきました。
学校に行けば今度は「学校に行ったら行ったで起こる問題」が発生します。
その問題に家庭と子どもとが向き合い乗り越えたことで彼女は登校を続けられたと思います。
家庭が彼女を支え、彼女自身が学校での楽しみと目標を見つけ、努力し続けた結果かと思います。

そして、最終的には高校受験も乗り越え、全日制の高校への進路を獲得することができました。

今は高校生活も始まり、新たな生活のスタートを切っています。
彼女と親御さんの会話の大半は、不安なことよりも、楽しみにしていることの会話になりました。
彼女の今の生活が充実していることが伺えます。

親御さんからは「今でも時々心配になる日もありますが、毎日穏やかに過ごせている今を大切にしながらこれからも子どもを見守っていこうと思います。」というようなお話をしていただきました。


復学、継続登校、中学卒業、そして高校入学おめでとうございます!


どんきー先生(代表カウンセラー 佐藤博)


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