今週は、中学3年生の男の子が復学することができました


7ヶ月間の不登校でした。


中学2年生の頃から、「休みたい」と親に訴えてくるようになりました。

当初の理由は友達に「気持ち悪い」と言われたことのようです。

行き渋り初期は、それを「いじめ」と捉え、親御さんも学校側に対応をお願いして当事者同士で話し合う場を設けたり、親御さん同士で意見交換をしたりするなどの対応を取られて解決を目指しました。
しかし、中学生の世界は時に大人の世界よりも残酷で、その結果として起こったのは、さらにクラスで無視されたり陰口を叩かれたり、キモいといわれることがさらに拡大してしまい、さらに彼を傷つけてしまう結果になりました。


不登校になってからは、スクールカウンセラーや市の相談機関に藁をもすがる思いでご相談されました。

スクールカウンセラーのアドバイスを親が受け、3ヶ月後に初めて子どもとスクールカウンセラーが会うことができましたが、継続して相談することもなく、「ゆっくり待ちましょう」という対応を取られました。市の相談機関からもメンタルフレンドの派遣などがあったようですが、子どもは受け入れませんでした。



子どもの性格としては、まじめで、繊細。頑張り屋さんだけど長続きしない。大人の評価を気にするようなところもありました。


私たちの支援を開始したのが4月。

親御さんとしても、学年がわりになれば子どもが動き出すかもしれない、スクールカウンセラーとの関係が進んでいくかも知れないという思いがあり、4月頭の状態を見て考えたいとのことでした。

しかし、クラス替えがあっても子どもは動き出すことができずに親御さんは私たちのところに支援を依頼されました。


中学3年生の場合は、復学という大きな目標に加えて、高校の進路も確定させる学年でもあるので、他の学年よりも支援は足早にしていかなければなりませんでした。復学出来ても勉強面の遅れが大きくて進路がない状況では、彼の性格では再び、自分の殻にこもってしまうかもしれません。

中学3年生の支援の場合、様々なリスクを親御さんに話して、ご賛同いただいた上で早期にダイレクトアプローチをしていく必要があります。
そしてそれが子どもの心に響き、意識を変えていく結果につながるかは、やってみないとわからないところがあります。これは民間の支援機関で少なからずお金を頂いている立場であるのに無責任だと捉えられるかもしれません。しかし、それくらいに中学3年生の復学支援というのは先の読みが立ちにくく、絶対の自信を持って対応できないところもあるのです。
そのあたりも正直に親御さんにお話ししました。


GW明け、直接私がお子さんと会い、話をしました。


「行きたいけど行けない」
「いじめられている。怖い」
「勉強も何もわからない」
「だれも信用できなくなっている」
「親にも悪いとは思ってるけど、親のことも信頼できなくなっている」
「どうせ僕は努力してもダメなんだ!」
「心と体がバラバラです。僕はダメな人間なんだ!」


教育コーチングの場で彼は涙ながらに、自分の気持ちを正直に話しました。
気持ちが昂ぶって、最後の方は鼻血をだしながら苦しそうに心が叫んでいるようにも感じられました。


彼の言葉を借りれば、休んでいる間に様々なことがトラウマになって夜も眠れないし、気分のすぐれないとのことでした。この先のことを考えても希望が持てないとも話していました。

判断としては、自己肯定感が低く、不登校中にどんどん不安を大きくしてしまい、自分の中で処理できなくなってきているという印象を受けました。
私は彼の不安をひとつずつ共感的に受け止めていくことを中心に、対応をしていきました。そしてその上で、具体的に何からできるのかを話し合い、子どもも納得の上で、支援をしてもらう訪問カウンセラーの先生と顔合わせをしました。


そこから1か月間、学校側との話し合いや、いじめの実態(予想外にすでに配慮いただいていてとても助かりました)、クラスの現状を確認し、新しいクラスのお友達にも遊びに来てもらって人間関係を築きました。

また、訪問カウンセラーの先生とは遊びを通じて信頼関係を作り、二人三脚で勉強面のフォローや、昼夜逆転のアプローチ、学用品の準備などを進めていただきました。

とても深い闇を抱え込んで動けなくなってしまっていたケースでしたが、結果的には支援を受けてから1ヶ月半ほどで学校へ戻ることができました。



しかし、不安要素はたくさんあります。

本来、ダイレクトアプローチ前に親御さんに学んでいただく家族療法の部分を駆け足で行い、1日でも早く彼を戻してやることを優先したので家庭内対応を後回しにしました。

家庭内対応の細かいテクニックは、努力しだいですぐに身につきます。

しかし、親御さんの本質的な部分というのを変えるにはどうしても時間がかかります。そしてそこが変わらないと、再び、彼は休むことを選択してしまう可能性が高いと判断できます。
また、子どもの性格傾向として、頑張り屋さんだけども長続きしないというところもあるので、このまま1日も休まずに登校し続けるとは安易に考えられません。休んでは支え、休んでは励まし、休んでは勇気づけという形で、サポートしていくことで毎日学校へ行って小さな不安を乗り越える経験を積み重ねてほしいなと願っています。


今日が登校2日目。 特に行き渋ることなく自転車で登校しました。


初日には聞けなかった言葉・・・



「お母さん行ってきます」



を聞けて親御さんも感動されたようです。その気持ちを忘れずに今後、後回しにした家庭内対応を学んで頂いて、より精進して頂ければと思います。

私もこの2日間ほどはまどろむ程度しか眠れず、食事もほとんど取れない状態でした。しかし、子どもはそれ以上の緊張を抱えて自分の居場所へと戻っていきました。とりあえずはこの2日間のことは手放しに喜びたいと思っています。




登校おめでとうございます